ハイパーコンバージドインフラ(HCI)とは

ハイパーコンバージドインフラとは

ハイパーコンバージドインフラとは、SANやNASなどの外部共有ストレージを利用せずに、業界標準のx86サーバーに搭載されたローカルのSSD、HDDをソフトウェア機能によって統合したアプライアンス製品です。
X86ベースの各物理サーバー(ノード)には、CPU、メモリー、SSDやHDD、ハイパーバイザーが格納されています。

ハイパーコンバージドインフラ登場の背景

現在、企業における仮想化インフラの導入は8割以上となっていますが、そのほとんどがサーバー、SANスイッチ、ストレージの3Tier型の構成となっています。しかし障害の切り分けや拡張作業などは複雑で、日々の運用に頭を抱えているIT部門も少なくありません。その結果、担当者は日々のメンテナンスに時間を割かれ、新しい技術の導入やビジネスの成長につながる「攻めのIT」に時間を割くことが難しくなっているのが現状です。

このような状況で脚光を浴びているのが、Webサービス大手企業のFacebookやGoogleなどが採用したWebスケールITという新しいアプローチです。彼らは急成長するビジネスにも追随して迅速にシステムを拡張し、さらに運用をシンプルにすることで運用費用を削減しています。

これまでWebスケールITの特長をもつ仮想化インフラを構築するには、高度なスキルをもったエンジニアが開発、設計する必要がありました。そこで、エンタープライズでもWebスケールITのシステムを容易に導入出来るようにパッケージ化されたのがハイパーコンバージドインフラです。

ハイパーコンバージドインフラの3つの特徴

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1.短期導入
  • 設計検証済みプラットフォーム
  • オールインワン
#
2.データセンター費用削減
  • ストレージ排除によるラック削減
  • 集約度の高いサーバを採用
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3.必要に応じた拡張(スケールアウト)
  • すべてのリソースを拡張
  • Pay as you growで投資

ハイパーコンバージドインフラの特長について詳しくはコチラ >

ハイパーコンバージドインフラの仕組み

ハイパーコンバージドインフラのHWは、x86サーバーのみで構成されています。各社独自のSoftware Defined Storage(ストレージ仮想化)の技術を使うことで、 外部ストレージやSANスイッチを排除し、各サーバー(ノード)の内蔵ディスクを論理的に一つのストレージプールに見せています。

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従来型のインフラとの違い

仮想化が普及する中、従来の3Tier型仮想化インフラの様々な課題を解決するために、2008年頃に垂直統合型のコンバージドインフラが登場しました。

コンバージドインフラは主要ベンダーのサーバー、SANスイッチ、ストレージ、などのハードウェアをラックに入れソフトウェアと共にパッケージで提供するものです。従来の3Tier型の構成であることに変わりないものの、ハードウェアの設計は事前検証済みで提供されるため、導入スピードが早くなるメリットがあります。しかしカスタマイズが難しく、大規模なシステム向けとなり初期導入費用が高くなるというデメリットがあります。

小規模なシステムでも使いたい、必要に応じて容易に拡張したい、複雑で属人的な運用負荷を軽減したいというニーズから、2009年頃にハイパーコンバージドインフラが登場しました。各インフラの特長は下記の通りです。

従来の3Tier型仮想化インフラ コンバージドインフラ ハイパーコンバージドインフラ
システム構成
HCIとの比較 従来の3Tier型仮想化インフラ
HCIとの比較 コンバージドインフラ
HCIとの比較 ハイパーコンバージドインフラ
主な製品/メーカー
  • サーバー
    富士通、日立、NEC、HPE、DellEMC、IBM、Ciscoなど
  • ストレージ
    富士通、日立、NEC、3PAR、DellEMC、NetAppなど
  • V-Block(DellEMC社)
  • ExaData(Oracle社)
  • FlexPod(Cisco/NetApp社)

など

  • Nutanix(Nutanix社)
  • SimpliVity(SimpliVity社)
  • HC-250/380(HPE社)
  • VxRail(DellEMC社)

など

アーキテクチャのシンプルさ ×
(3Tier型)
×
(3Tier型)

(サーバー/ストレージ一体型)
スモールスタート ×
拡張作業の容易さ ×
構成の柔軟性 ×
短期導入 ×
運用管理の容易さ
(複数の管理ツールが必要)

(複数の管理ツールが必要)
事前検証済みの設計 ×
初期導入費用 ×
(高価)

(安価)

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各インフラのメリット・デメリット

従来の3Tier型仮想化インフラ

従来の3Tier型仮想化インフラは、サーバー、SANスイッチ、ストレージで構成されています。エンタープライズの仮想化インフラの大半がこのアーキテクチャーになっているため、ITP担当者には一番なじみの深いインフラです。

メリット
  • システム要件や既存環境に合わせてベンダーや製品を自由に選択できます。
  • ビジネス規模にかかわらず、小規模から大規模まで対応できます。
デメリット
  • 導入時は、サーバー、SANスイッチ、ストレージの最適な組み合わせや複雑なサイジング、各製品のバージョンを考慮した設計・設定が必要です。そのため、システムの信頼性やパフォーマンスは事前に予測できません。
  • 導入後は、各製品の管理ツールを使用して日々の運用管理を行わなければならず、万一障害が発生すると障害箇所の切り分け作業は困難です。
  • 拡張時は、サイジングのやり直しが発生することで容易に拡張できない、パフォーマンスがコミットされていないなどの課題もあります。
  • ネットワークI/Oがボトルネックになる場合も多くあります。近年オールフラッシュのストレージが注目を集めていますが、たとえSSDを活用してもネットワークI/Oのボトルネックは解消されません。

コンバージドインフラ

コンバージドインフラは「垂直統合システム」とも呼ばれる、主要ベンダーのサーバー、SANスイッチ、ストレージ、ソフトウェアを組み合わせ、最適化された構成で提供される仮想化インフラです。この設計は従来の3Tier型仮想化インフラと同様です。
設計を事前検証済みの状態で一つのラックに集約し、バージョン合わせやパッチの適応も工場出荷前に済ませるため、信頼性の高いシステムになっています。

メリット
  • 主要ベンダーから仮想化インフラに必要なハードウェアとソフトウェアの設計を事前検証済みでパッケージとして提供されるため、信頼性の高いシステムを短期導入できます。
  • ベンダーが提供するパッケージを追加することで、容易に拡張できます。
デメリット
  • 導入後は従来の3Tier型仮想化インフラと同様に各製品から提供される複数の管理ツールを使う必要があるため、運用の負荷は軽減されません。ただし、ベンダーが提供するサポート一括窓口を利用することで、サポート負荷を軽減できる場合もあります。
  • 構成はあらかじめ決められており柔軟性に欠けます。また、主に大規模向けのパッケージであるため、スモールスタートができず初期導入費用が高くなる傾向にあります。
  • アーキテクチャーは従来の3Tier型仮想化インフラと同様のため、ネットワークI/Oの問題は解決できません。

ハイパーコンバージドインフラ

ハイパーコンバージドインフラは、SANスイッチとストレージを排除し、分散ファイルシステム※の技術を使ってx86サーバーのみで構成されるシンプルな仮想化インフラです。
分散ファイルシステムの技術によって各サーバーの内蔵ディスクを論理的に一つのストレージプールに見せることができます。ハイパーバイザーをインストールしたハイパーコンバージドインフラをネットワークスイッチに接続すれば、仮想化環境を即座に利用できます。

※分散ファイルシステム:複数のサーバーに分散配置されたファイル群を、ネットワークを通して単一のボリュームとして扱うことのできるファイルシステムのこと。

メリット
  • ハードウェアとソフトウェアの設計は事前検証済みで提供されるため、信頼性が高いシステムを短期導入できます。
  • SANスイッチとストレージが排除されるアーキテクチャーのためネットワークI/Oの問題が解消され、運用負荷を大幅に軽減できます。
  • 最小構成で初期導入費用を抑えて導入し、リソースが足りなくなったらサーバーを追加するだけでCPU、メモリ、ディスクのリソースを容易に拡張できます。
デメリット
  • CPU、メモリ、ディスクのコンフィグレーションは柔軟に選択できますが、従来の3Tier型のように任意のベンダー製品を組み合わせることはできません。

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ハイパーコンバージドインフラの基礎知識

ハイパーコンバージドインフラの基礎知識

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