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既存の技術を利用者のニーズに合わせローカライズし、提案する一連のプロセスには、一から自社でアプリケーションを開発するのとは違う難しさがあります。今回は、アプリケーション事業本部で取り組みをしているメンバーに話を聞いてみました。

アプリケーション事業本部 アプリケーション事業推進部 ビジネスデザイン課 課長
植村 仁

現在取り組み中の事業について、概要を教えてください。また、取り組むきっかけとなった背景などはありますか?

非対面の環境においても、お客様がワンストップかつシームレスに一連の業務を完結できる、Moxoというアプリケーションの提供を目指しています。Moxoの最大の利点は、単にコミュニケーションツールとして使えるということではなく、1つのアプリケーションの中で契約まで締結できてしまうところにあります。チャットやメール、ビデオ会議といった社内外のコミュニケーションチャネルを一つのプラットフォームに集約し、商品提案から契約手続き、更にアフターフォローに至るすべての応対業務に一気通貫で対応できるのです。

Moxoは元々、アメリカで開発されたアプリケーションです。当時、在米銀行の方がMoxoの存在を耳にし、銀行業務に活用してみたいということで、取り扱いベンダーを探していらっしゃいました。当社はWeb会議サービス Zoomの取り扱い実績があり、アメリカにNissho Electronics (U.S.A.) Corporation (NEA)という連結子会社のオフィスを構えていることもあり、当社に頼めばなんとかしてもらえるのでは、と思ってくださったところから、本事業の取り組みはスタートしています。

それは、なかなか便利なアプリケーションのようですね。アメリカでは既に広まっているものの、日本では認知度が低い、あるいはニーズがあまりないということなのでしょうか?

アメリカでは、Moxoは富裕層向けアプリケーションとして提供されています。特に富裕層には時間と効率を重視する価値観が根付いており、ツールにより日々の生活や業務が便利になるのであれば大歓迎、という空気感があります。国土が広大なため、人に会いに行くのに時間がかかるケースが多く、ビジネスにおいて対面で会うことが、それ程重要視されていないという背景があります。それに対し日本では、物理的に会いに行けるケースが多いですし、たとえ距離が離れていたにしても、遠くからわざわざ足を運んでもらったということに価値を見出す文化であるように感じます。自分のために労力を費やしてくれる姿勢を評価する文化ですね。土地柄と文化の違いにより、受け入れられるサービスが異なるというのが、私の見解です。

そのような背景を抱えながらも、日本の金融機関にMoxoを導入する取り組みを続けているのでしょうか? お客様との関わりにおいて印象を受けた点やこだわった点などがありましたら、教えてください。

日本向けにローカライズする際、できるだけ自然な日本語を取り入れることと、アプリケーションの品質担保には気をつかいました。初期の段階においては、いかにも翻訳感丸出しの日本語が使われていたのですが、当時Moxoを導入しようとされていたお客様から「日本語がおかしいよね」というご指摘を受け、すべて徹底的にチェックをし、表現を整えることにこだわりました。

また、金融機関向けということもあり、品質面では特に細かいご指摘を受けました。品質に関しても、まずは徹底的に調査した上でテストを重ね、アメリカのMoxo社に改修依頼を出し、最終的に社内でチェックをしてからお客様に提出するというところまで対応しました。

金融機関においては、品質のみでなくセキュリティの担保も非常に神経をつかう要素となります。Moxoのサーバーはアメリカにあるのですが、他国のサーバーを利用することに抵抗のあるお客様からのご要望により、お客様が自前で保有されているサーバーを利用してのサービス提供に切り替えるという作業も実施しました。

以前バックオフィス向けサービスを扱っていた時は、お客様とはシステムに関し、事務的にその場限りの会話を交わすだけでした。しかしMoxo事業においては、お客様との関係性がまったく違うと感じています。サービス導入により、単に一部の業務が効率化されるということではなく、お客様の会社の業務プロセス全体が影響を受けることになります。最終的には店舗や人員削減の可能性をはらむ取り組みであり、社員一人ひとりに与えるインパクトには計り知れないものがあります。お客様の背後にまで思いを馳せ、本当に実現したいことは何か、真摯に考えを巡らす過程は、自分にとってかけがえのない貴重な経験となっています。

事業立ち上げにあたり、プロジェクトメンバー同士の連携に関しては満足していますか?苦労したポイントなどがあれば、教えてください。

当社が双日システムズと合併した際、アプリケーション事業本部内に両社のメンバーが所属する技術部隊が生まれました。その課の新規事業となったのが、Moxoです。自分は双日システムズ出身なのですが、それまで海外の製品を取り扱った経験がほとんどなく、どのようにアプローチしていけばいいのか、雲をつかむような心境でした。現在は自分の所属する課で事業企画を担当していますが、当時は企画部隊として別の課が存在し、そのチームと融合を図ることが難しかったですね。

当時所属していた技術部隊には、ERPGRANDITなど、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーがいましたが、保守や導入業務の経験しかないという人がほとんどでした。そのような寄せ集めチームがいきなり営業経験の豊富なメンバーと組んで事業を創っていくことになり、好奇心があった反面、いったいどう進めていけばよいのかという戸惑いも大きかったです。当時は本当に手探りの状態でした。

皆さんの地道な努力の積み重ねにより、Moxoビジネスは成り立っているのですね。

まだ検証段階ですので、ビジネスを回すという状態にまでは至っていません。当事業本部の新規事業として本プロジェクトが始動した頃は、組織の業務プロセスを根底から動かす取り組みとして、かなり大きな構想を描いていました。しかし、実際にお客様と会話し、お客様の内情に関する理解が深まるにつれ、軌道修正をかける必要性に迫られるようになりました。パックオフィスの効率化や自動化ということであれば、お客様も慣れていらっしゃるのですが、フロントオフィスの流れを大きく変えるケースというのは過去にあまり例がなく、躊躇されているようです。

Moxoは、現状の商習慣の一歩先をいくサービスと言えるのかもしれませんね。

そうですね。人間の心理として、一気にそれまでの業務手順や環境が変化すると、本当に大丈夫か不安になるのでしょう。特に信頼や安全・安心という基盤の上に成り立っている業界においては、その傾向が顕著だと感じています。経営合理化が一気に進むため、慎重に時間をかけながら検討されるのだと思います。

お客様の立場や状況に寄り添い、二人三脚でじっくり進めていく必要があるということですね。すぐに結果の出るビジネスではないので、途中で挫けそうになったこともあるのではないですか? 何がこの事業を続ける原動力になっているのでしょうか。また、将来の展望などがあれば教えてください。

なかなか成果が出ないので、迷うことはあります。アプローチする業界を銀行だけでなく、保険や証券、それにブライダルと少しずつ広げてみましたが、どこも簡単ではないですね。ビジネスである以上、結果を出すことは重要ですが、Moxo事業においては世の中に向けての新たな提供価値を考え抜き、試行錯誤していくプロセスそのものが自分の財産になっていると感じます。お客様が「このような機能がほしい」と声をあげてくださる度に、どうにかしてご要望に応えようと努力する過程が自分の血となり肉となるのです。たとえ細く長くではあれ、その先もお客様との関係性を通じて、自分達の信じるソリューションを提供する取り組みを続けていきたいです。

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