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IoT Interview

強さの秘密 日商エレクトロニクス Vol.6

他社に先駆けたIoT活用サービスで社会から運転事故を撲滅する。デジタライゼーション本部デジタルイノベーションサービス部IoTイノベーション課 課長 小林 悟郎、アプリケーションスペシャリスト 川﨑 千亜季 他社に先駆けたIoT活用サービスで社会から運転事故を撲滅する。デジタライゼーション本部デジタルイノベーションサービス部IoTイノベーション課 課長 小林 悟郎、アプリケーションスペシャリスト 川﨑 千亜季

営業用など、社用車を保有している企業は多い。しかし、社用車のドライバーに十分な安全運転指導を施している企業は少ないのが現状だ。どうしたら安全運転を確保できるのか。解決の一翼を担うのが日商エレクトロニクスのテレマティクスクラウドサービス「くるま-i」である。IoTを活用して運転状況を常に監視し、その情報を基に適切な安全運転指導を行えば、事故を減らすことができる。2018年秋口にはさらに機能向上した新型車載搭載端末を投入し、企業の車両に関する課題の解決を図っていくという。

まったく売れなかった期待のサービス

車載器と移動体通信システムを利用して、さまざまな情報やサービスを提供するテレマティクスクラウドサービス。日商エレクトロニクスの「くるま-i」は、独自のドライブレコーダー車載器に移動体通信機能を搭載しており、車両から日時・位置・急ブレーキ・急発進・速度超過などの情報を自動収集してクラウド上へ自動的に送信するサービスである。取得した動画データや各車両の運転状況を、企業ごとの専用サイト上で「見える化」している。また、収集したデータを使用し、企業で保有している社有車の稼働状況や事故の発生傾向を分析・可視化するサービスも展開しており、「見える化」に特化したサービスであることが大きな特長だ。

そればかりではない。急ブレーキや急アクセル、左右急ハンドルを車載器の加速度センサーがリアルタイムに検知し即座にクラウド上の「くるま-i」と連携。危険度に応じて、取得された10秒前後のドライブ映像をクラウドに自動アップロードすることが可能。“ヒヤリハット”として検知された情報は、ユーザー企業の担当者(任意で設定可能)にメール通知するといった機能も併せ持つ。このため、ドライバーは安全運転をより意識するようになる。また、映像を基に安全運転に関する適切な指導を管理者が行うことで、さらに事故を減らすことができる。

「くるま-i」は、まだクラウドやドライブレコーダーが一般にそれほど認知されていなかった2011年にサービスを開始した。当時、日商エレクトロニクスでは、今後トレンドになる技術として「モバイル」「クラウド」「ビッグデータ」に着目していた。そして、この3つのキーワードに軸足を置いた斬新なソリューションを展開することになり、いくつかの新規事業を立ち上げた。その一つが「くるま-i」である。

「当時は言葉すらありませんでしたが、IoTサービスの先駆けと捉えることもできます」と、このサービスの現在の責任者である小林悟郎は紹介する。

しかし期待をよそに、「くるま-i」は売れなかった。


ターゲットを「緑ナンバー」から「白ナンバー」に転換

このままでは事業撤退もあり得る。そうした状況を見かねた経営陣から「事業の立て直し役」として白羽の矢を立てられ、2012年より同サービスの新たな責任者に任命されたのが、小林だ。

ICTのトレンドを追求した新事業といえば聞こえはよいが、その新たな責任者に着任した小林の目の前に積み上げられたのは、2億4,000万円にも及ぶ車載器の在庫の山だった。当初は「どうしたらいいかまったくわからなかった」と小林は振り返る。

当初「くるま-i」が主なターゲットのお客様としていたのは、トラックやタクシーなどのいわゆる「緑ナンバー」の営業車を抱える運送事業者だった。しかし、これらの営業車を運転するドライバーは、プロとして運転技能に高いプライドを持つ。それだけに、「くるま-i」のようなサービスには拒否反応を示しがちで、「くるま-i」の機能には注目してくれるものの、導入にはなかなかつながらなかった。

サービス自体は良いものなのに普及しない。いったいどこにニーズがあるのか。小林をはじめとするメンバーは会議を重ねたが、なかなか妙案は出ない。

そんなある日、「緑ナンバーがダメなら、白ナンバーはどうだ」というアイデアが出た。早速小林は、外回りの営業車などに使われている白ナンバーの社用車への展開の可能性を探った。

「さまざまな展示会や自社主催のセミナーなどを通じてお客様にヒアリングしたところ、若手社員に社用車を運転させていることに対して、予想以上に多くの企業がリスクを感じていることが明らかになりました」と小林は説明する。

若年層のクルマ離れが叫ばれるようになって久しいが、ほとんど運転経験のない新入社員が営業部門やサービス部門などに配属され、いきなり外回りの業務で運転を任されるケースは珍しくない。しかし、運送事業者とは異なり、徹底した運転指導を行うことは難しく、多くの企業が常に事故の不安を抱えているのが実情だったのだ。

小林は、「くるま-i」のターゲットを「白ナンバー」の社用車を多数抱える企業に切り替えることを決断する。


販売パートナーの全国拠点を行脚して回る

では、そうした企業にどうやって認知してもらうか。社用車の担当部署は、日商エレが普段から取引しているIT部門ではない。「ここは実績のある企業と組むしかない」と考えた小林は、車両リース事業を生業としている企業との代理店契約を締結し実績を増やしていく一方、総務部門に強く、全国を面でカバーしている販売会社を探し出し販売パートナー契約を締結する。

とはいえ、新しいサービスだけに販売会社任せにするわけにはいかない。「くるま-i」の良さをわかってもらうために、まずは販売パートナーの社員に「くるま-i」がどのようなサービスなのか、導入するとどのようなメリットがあるのかを理解してもらわなければならない。小林をはじめとするメンバーは、販売パートナーの全国の拠点を行脚して、説明に回った。

こうした数々の施策が功を奏し、徐々に「くるま-i」の売れ行きは上向いていく。

「ようやく私たちに追い風が吹いてきたと感じました」。小林は当時の心境をこう語る。

だが、ユーザーの拡大には思わぬ落とし穴があった。ユーザーが多くなるにつれ、クラウドシステムのサーバーのレスポンスが悪くなるという事態が起こったのだ。

この解決に当たったのが、システム周りを担当する川﨑千亜季を中心とする技術スタッフだった。結果的に、当初のデータベース周りの設計に問題があったことが判明、システムをゼロから組み直すことにする。

また、それ以外にも、ドキュメントの整備や協業のシステム会社との調整など、すべきことは山ほどあった。

「サービスになるべく影響を与えないために深夜にサーバーを切り替えるなど、改善には苦労させられました」と川﨑は振り返る。

こうしたシステム周りのトラブルも無事に乗り越え、現在では順調な運用が行われており、導入台数も右肩上がりで伸びている。

真剣な「ありがとう」の声に感動

「くるま-i」は2015年度にようやくサービスとして軌道に乗った。

「それまでの3年間は、撤退を迫る社内の反対の声とまさに戦い続けた日々でした」と小林は苦笑する。

「くるま-i」は小林が立ち上げたサービスでもなければ、自ら望んで責任者になったわけでもない。それでも、小林は撤退するつもりはまったくなかった。

小林にそれを決意させたのは、約1,000台の社用車を所有する、あるユーザー企業から寄せられた声だ。

そのユーザー企業が「くるま-i」を導入したところ、半年後に前年同月比で事故の発生件数を約85%も削減できたという。

「私もこれまで多くのシステムやサービスを提供してきましたが、この時ぐらい真剣な『ありがとう』というお言葉をお客様からいただいたことはありませんでした」と小林は語る。「『くるま-i』が交通事故削減という大きな社会貢献を果たしていることを誇りに思うようになったのです」。

川﨑も、「自分がかかわったシステムが、交通事故を減らし、ひいては人命を救うことに役立つのです。これは本当にすごいことだと思います」と強調する。

さらなるユーザーサービスの向上を狙って、2017年4月には「くるま-i」2へのリニューアルを実施。社員が共有して使用する車の予約などが行える「共有車の管理機能」、急ブレーキや速度超過などの情報を管理者に即時知らせる「リアルタイム通知機能」、長期非稼働車両のデータも閲覧可能とする「動態監視機能」などの機能拡張を図った。

「『くるま-i』の利用拡大に伴って、クラウドに集まるデータもさらに増えていきます。今後も引き続き、これらのデータをお客様ごとにより簡単に分析できるような環境を実現し、さらなる交通事故削減に貢献していきたい」と川﨑は今後の目標を説明する。

小林も「『くるま-i』のことを知らないお客様はまだまだ多い」と今後のユーザー拡大に期待を寄せる。「2018年秋口に新型車載器を投入し、リアルタイム画像解析によるADAS(※)機能(車間抑制機能、レーン逸脱検知、逆走検知機能)など、事故削減に向けたさらなる機能強化を図ります。今後も当社のIoTソリューションの主力事業として、社会貢献サービス『くるま-i』2に注力していきます」。

(※)ADAS: Advanced driver-assistance systems

測定機器を装着した車両の位置・運転情報をGPSと連動して収集し、各車両の運行状況を顧客に知らせるテレマティクスサービス。事故やコスト削減を目的に運送会社や自動車レンタル会社など、車両を保有するすべての企業のお客様を対象に導入いただいています。

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