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ケーススタディ 校内のどこでも、自由に、即時に、ネットワークをデリバリーできる。 そんな次世代キャンパス間接続ネットワークを目指し、 Cisco SD-WANによるSD-WAN環境を構築

東京大学情報基盤センター様

東京大学情報基盤センター(以下、情報基盤センター)では、キャンパス内で柔軟なパス設定を提供する次世代ネットワークの実証研究として、Cisco SD-WAN(旧Viptela)製品によるSoftware Defined WAN(以下、 SD-WAN)環境を構築した。その経緯とねらいについて伺った。

Before/After

課題/目的

  • 基幹・支線ネットワークから即時的かつ柔軟なネットワーク構成への需要変化
  • 研究現場の最前線から寄せられる要望の多様化
  • 従来のネットワークでは自由にプロビジョニングすることが不可能

日商エレクトロニクスの支援により、Cisco SD-WANを導入

効果

  • 物理的な構成から解放され、オンデマンドでネットワークのデリバリーが可能に
  • SD-WANによってオーバーレイで自由に仮想的なネットワークを構築
  • Cisco SD-WANをSD-WANエンジンとして利用したうえで活用できるAPIの実装
  • 東京大学情報基盤センター
    准教授 関谷 勇司 氏
企業名:
東京大学情報基盤センター様
所在地:
東京都文京区弥生2-11-16
設立:
1999年4月
URL:
https://www.itc.u-tokyo.ac.jp/ ターゲットブランクアイコン
事業内容:
国立大学法人東京大学(以下、東京大学)の情報システム部(本部)と協力して、 情報基盤となる設備の整備や情報技術を用いた各種サービスを提供

東京大学の研究・サービス提供施設としてさまざまなサービスを提供する「情報基盤センター」

情報基盤センターについて教えてください

情報基盤センターは、情報教育の支援、学術情報の提供、学内ネットワークの構築・運営・管理、スーパーコンピューターの運用などを行う東京大学の研究・サービス提供施設です。大規模コンピューターシステムの構築や応用、利活用における「研究・教育」と「サービス提供」をミッションとして、「情報メディア教育研究部門」「学術情報研究部門」「ネットワーク研究部門」「スーパーコンピューティング研究部門」という四つの研究部門が活動しています。また、学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点(JHPCN)の中核拠点としての機能もはたしています。

私は、教員として研究に取り組むとともに、センターの「ネットワーク研究部門」において、情報ネットワークの基礎技術から応用までの研究。さらには、本郷、駒場(I、II)、白金台(以上、東京都)、柏(千葉県)という 5つのキャンパスと複数の研究施設を結ぶ学内ネットワークシステムの構築と運用に携わっています。

関谷准教授は、現在、どのようなテーマの研究を行っているのでしょうか

「新たなネットワークモデルの設計・構築に関する研究」 として、ネットワーク構築の新たな概念となる、SDN(SoftwareDefined Network)や仮想化ネットワークを用いて 、これまでのインターネットならびに TCP/IPの機能では実現できなかった、より柔軟なネットワークとシステムの構築を行うための技術を研究しています。

「SDNや仮想化ネットワークを用い たネットワークシステム構築技術の研究を行っています。」

東京大学情報基盤センター 関谷 勇司 氏

Cisco SD-WAN製品によるSD -WAN によってキャンパス間ネットワークを構築

今回、Cisco SD-WAN製品で構築したネットワークの概要を教えてください

現在、東京大学のキャンパス内において、柔軟かつ安全なパス設定を可能にする次世代ネットワークの実証研究に取り組んでいます。その一環として、Cisco SD-WAN製品によるSD-WAN環境を構築し、2017年5月より試験運用を開始する予定です。

これまでの東京大学情報ネットワークシステム (UTNET) では、基幹ネットワークと呼ばれるバックボーン部分のネットワークを情報基盤センターが担当し、支線ネットワークと呼ばれる主に建物内部のネットワークに関しては、各拠点内の管理者が運用・管理していました 。
従来のネットワーク技術や東京大学の規模における運用効率や コスト、セキュリティなどを考慮すれば、このように役割を分担する管理方法が最適でした。しかし、昨今のネットワークの利用ではより即時的かつ柔軟なネットワーク構成が求められ、離れた拠点の研究室間をダイレクトに接続した り、一時的に会議室などへ普段利用しているネットワーク環境をデリバリーしたりする要求が発生しています。このような要求に応えるには、従来の運用形態では時間やコストの観点から容易ではありませんでした。

Cisco SD-WAN製品によるSD-WAN環境を構築することで、専用機器(vEdge)を接続すれば、学内のどこでも、すぐに、使いたいネットワーク環境を、物理的なネットワーク構成の制約を受けずに利用できるようにすると同時に、ネットワークの 管理やモニタリング、ポリシーやコンフィグ設定の管理や即時変更も、情報基盤センターにて一元化できる環境を実現したいと考えました。ただし、今は試験運用の段階で、専用機器も9セットしか用意していません(内一台は情報基盤センターに設置)。実際にサービスとして提供するためには、さまざまな検証やスムーズなサービス利用ができるようにするためのアプリケーションなども必要で、そのような利用環境の整備は今後さらに進めていく必要があります。また、実際にこのようなネットワーク環境に対する需要があるのかどうかも、試験運用の中で検証していきたいと考えています。

SO-WANなら物理的な構成から解放され、オンデマンドでネットワークのデリバリーが可能

SD-WANを採用した理由を教えてください

各キャンパスと国内各地に散らばる複数の研究施設において、研究者や各部門からは多様な要望が求められます。また、時間の経過とともに内容も変化していきます。そのような要望に対して、柔軟に対処できるしくみを実現し、学術の多様性を支える基盤を強化すると同時に、研究時間の確保と教育研究活動の質の向上を図るためには、 キャンパスやネットワーク機器の物理構成を超えたSDNインフラを構築し、即時にユーザーやデバイスに応じた最適なネットワークを提供できる環境が必要だと考えました。

しかし、従来のネットワークでは、セキュアで、広域かつ大規模なフルメッシュのオーバーレイネットワークを実現するのは難しく、ネットワークの物理構成や設定の制約を受けず、自由にプロビジョニングすることもできませんでした 。
SD-WANであれば、ネットワークの物理構成をシンプル化・冗長化しやすく、 オーバーレイで自由に仮想的なネットワークを設定することもできます。そのため、次世代のキャンパス内パス構成技術として、「場所に依存しない柔軟なネットワーク」や「迅速な構成変更が可能なネットワーク」を実現できると考えました。

稼働実績や運用性、サポート体制などを評価し、Cisco SD-WANを採用

Cisco SD-WAN製品を採用した理由を教えてください

SD-WANを実現できるいくつかの製品の中で、特別なことではないかもしれませんが、「きちんと動く、つながる」こと、そして、「国内で正式にサポートを受けられる」ことを要件に機能などを比較しました。Cisco SD-WAN製品を採用した主なポイントは次の通りです。

【採用理由 1】稼働実績

欧米における稼働実績が豊富であること。すなわち、きちんとつながる製品であることは、重要な選定のポイントでした。実際、数百拠点の I P s e c VPNフルメッシュなネットワークを実現しているケースもあると聞いており、安心して利用できると判断しました。

【採用理由 2】ゼロタッチプロビジョニング

設置のためのオペレーションやナレッジが不要で、専用機器(vEdge)をネットワークにつなげるだけで自動設定できる「ゼロタッチプロビジョニング」の 機 能を高く評 価しました。また、専用機器にはLTE に対応したモデルも予定されており、校外での利用が可能な点も評価 ポイントでした。

【採用理由 3】クラウドからの一元管理

ネットワークを管理するコンポーネント(vManage)を AWS(Amazon Web Services)などで運用することで、当校で同環境をいちから構築する必要がなく、クラウドからの管理、専用機器の設定やモニタリングができるようになるため、スピーディーかつ柔軟な運用が可能だと考 えました 。

【採用理由 4】APIの提供

APIが提供されているので、東京大学内部のサービスを提供するためのソフトウェアを実装するにあたって、Cisco SD-WANをSD-WANエンジンとして利用し、その上にさまざまなサービスを展開できる点も重要な選定ポイントでした。ユーザーに提供するにあたっては独自ソフトウェアを実装し、ViptelaのAPIを呼ぶことでサービスを実現しています。

【採用理由 5】サポート体制

国内で正式にベンダーのサポートを受けられるという点に関して、日商エレクトロニクスによるサポートが受けられることも、Cisco SD-WAN製品を採用した理由の一つです。
日商エレクトロニクスは、ネットワークに明るく、キャリアや大手企業などにおける経験や実績も豊富で、先進的な技術にも強いと評価しています。
さらに、基幹ネットワークもサポートしてもらっており、当校の事情や環境を理解していることから 、安 心して機器の導入やネットワークの構築を進められると考えました。

日商エレクトロニクスへの評価と期待

日商エレクトロニクスへの要望や期待があれば教えてください

Cisco(旧Viptela)社とも連携しながら、ネットワークの構築に関して「つなぐ」 ところはうまくサポートをしてもらえました。実際の運用開始後のサポートはもちろん、他の導入事例に関する情報提供にも大いに期
待しています。また、今後は API の積極的なサポートにも期待しています。学内向けにサービスを提 供するにあたって、特定の個人が作ったアプリケーションに依存してしまうのはメンテナンスの観点 からリスクがあります。専門ベンダーが責任を持ってもらえるアプリケーションであれば、安心して使い続けることができます。

最後に、SD-WAN の導入を検討している方へのアドバイスがあればお聞かせください

拠点が多く、接続先の追加変更などに伴う工数やコストが負担となっている企業にとってSD-WAN は 、コストや運用負荷の軽減はもちろん、即時性やセキュリティ面での効果も期待できる優れたソリューションだと思います。当校における取り組みでは API について重視しましたが、キャリアやプロバイダーではない一般企業では、API による制御までは不要で、既存のコンソールの機能で問題なくSD-WANを運用できるはずです。

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