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2016年02月16日

介護離職の予備軍は42万人!先んじて介護支援の対策を行う5つの企業事例

みなさんの会社に、近い将来、介護を担う従業員はどれくらいいるでしょうか? 2025年ごろ、団塊の世代が75歳を迎えます。その子ども世代にあたる従業員の介護離職者が増加する波は、もうすぐそこまで来ているのです。 そのような状況下にもかかわらず、まだ介護支援制度の整備が進んでいない企業が多いのも事実。このままでは多数の大切な労働力を失いかねません! いまから有効な手を打つために、介護離職者の実態や代表的な各社の取り組みなどを見ていきましょう。

介護離職の実態!5年で約49万人が離職

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実際、介護による離職者はどれほどいるのでしょうか。

総務省の調査(2012年度)によれば、雇用者のうち介護をしている人は約240万人。しかし、介護休業や短時間勤務といった制度を利用できた人は38万人にも届きません。そして、2007年から2012年までの5年間で「介護・看護」を理由として離職した人は49万人近くに上ります。5年ごとの推移でみれば過去よりも減っているものの、企業として憂慮すべき数字ではないでしょうか。

介護をしている人はそうではない人に比べて就業率が低いという結果もあります。それほど介護にはパワーがかかるということ。介護と仕事を両立できるようにサポートしていかなければ、貴重な戦力である社員がどんどん去っていく事態になりかねないのです。

また、企業はこの実態をどれくらい把握できているのでしょうか。

厚生労働省の「仕事と介護の両立に関する企業アンケート調査」(2012年度)を見てみましょう。過去3年間に、従業員が介護をしているかどうか、何らかの支援を必要としているかどうかを把握しているか聞いたところ、「特に把握していない」という回答が46.4%。およそ半数の企業は、従業員の介護問題に関して実態を把握できていない、という現状が浮き彫りになりました。

介護離職後に待ち受ける厳しい現状

厚生労働省が労働者に向けて行った調査(2012年度)では、介護をきっかけとして離職した人にその理由も聞いています。1位は「仕事と『手助・介護』の両立が難しい職場だったため」で男女ともに60%を超える結果。5割強の人が本当は「続けたかった」と思いながら離職しているので、職場環境さえ整っていれば、辞めずに済んだ人が多いと予想されます。

しかも多くの場合、仕事を辞めた後にはいっそう厳しい状況に直面します。精神面、肉体面、経済面の3つに関して、「非常に負担が増した」「負担が増した」を合わせると、3つとも半数を超えるという結果です。

また、より介護しやすい職場を求めて再就職すると、以前より雇用・収入の条件が悪化する場合が多いのが現実です。別の調査によれば、介護のために転職し、正社員として働けている人は男性で34.5%、女性で21.9%とごくわずか。気になる年収は下記のとおり下がっています。

  • 男性 転職前 約557万円 ⇒ 転職後 約342万円(約4割ダウン)
  • 女性 転職前 約350万円 ⇒ 転職後 約175万円(約5割ダウン)

転職者の介護時間(仕事がある日)は、男性で1.6時間、女性で1.8時間増加しているとのことで、介護時間は確保しやすくなっているとはいえ、その代償は大きいようです。

中核社員の労働力を急速に失う企業

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介護による離職者が増えれば、企業にとっても当然大きなダメージとなります。先の総務省の調査によれば、介護中で仕事を辞めたいと思っている、もしくは転職を考えている人は約42万人にも及ぶというデータもあります。そのなかには、すでに介護しやすい他社への転職を本格的に検討している人も多いでしょう。

また、団塊の世代(1947~1949年生まれ)が2025年ごろに75歳(後期高齢者)に突入します。そのため、毎年200万人以上産まれたといわれる団塊ジュニアが、介護で手いっぱいになる日が刻一刻と迫っているのです。企業としては経験やスキルのある働き盛りの中堅社員を大量に失うリスクをはらんでいるということ。

従業員にとっても企業にとっても、介護と仕事の両立を真剣に考え、対策を講じるべきときが来ているのです。では、実際に介護離職防止に向けて、いち早く対策している企業は、どのような取り組みを行っているのでしょうか。事例をいくつか見てみましょう。

介護支援対策を行う5つの取り組み事例

2010年より第2ステップへ~NEC

2014年時点で45歳以上の従業員が半数を占める日本電気株式会社(NEC)では、早くも1990年から介護の両立支援に取り組んできました。

第1ステップとしては、介護休業の期間や頻度、短時間勤務の条件などを、利用しやすいよう徐々に改正。現在では、同一介護事由につき通算1年間まで何度でも休職が可能です。また、介護を理由とした短時間勤務は、介護事由がなくなるまで無制限で利用することができます。

先んじて取り組みを行うNECでは、仕事を続けるための制度がある程度整ったため、次に第2ステップに乗り出しました。今後は経済的な援助や孤独感、情報不足の解消に取り組むべきと判断し、2010年から介護転居費用補助や介護環境整備支援金の支給を始めました。また、介護支援に関するポータルサイトの運営、セミナーの開催などを行うことで、孤独感の解消だけでなく、当事者意識を養う取り組みもしています。

<ポイント>

  • 介護休業の期間や頻度、短時間勤務の条件などの改正
  • 介護転居費用補助や介護環境整備支援金の支給
  • 介護支援に関するポータルサイトの運営、セミナーの開催

調査・ヒアリングで課題を明確に~花王

2011年に「ワーク・ライフ・バランス大賞」優秀賞も受賞した花王株式会社。2008年から本格的に介護問題にメスを入れ始めました。以前より介護・看護で最長1年(1事由につき)の休暇がとれる制度を整備していましたが、さらに取り組みを強化しています。

花王では、はじめに従業員に対してアンケートやヒアリングを行い、介護対象者が時間面、経済面、精神面の主に3つの課題を抱えていること、それぞれが抱える問題は育児に比べて多種多様であるという実態を把握しました。また、2023年には社員の5人に1人が介護責任を負うようになるというシミュレーションも行い、本格的な取り組みが必要であることを再認識します。

時間面の課題に対しては制度の充実を、経済面の問題に関しては社員共済会(花王ファミリー会)による介護支援金を、精神面の課題に関してはセミナー、情報提供、コミュニケーションをとりやすい雰囲気づくりなどに取り組んでいます。

<ポイント>

  • 介護休職、介護休暇などの制度の充実化
  • 社員共済会による介護支援金
  • 介護に関するハンドブック、セミナーなどによる情報提供

情報提供に力を注ぐ~丸紅

調査の結果、介護に対する不安を抱える社員が多いことがわかったため、情報提供に主眼を置いた対策を行っているのが丸紅株式会社。海外に駐在している社員が多いことから、遠距離介護も課題のひとつです。

介護に関するハンドブックの提供、NPO法人との提携による相談窓口の設置、個別相談会といった支援体制強化策を行っています。不安を抱える社員たちが気軽に専門的なサポートを受けられる土壌を整えているのです。

<ポイント>

  • NPO法人との提携による相談窓口の設置
  • 個別相談会の実施

基本給の20%を見舞金として支給~河北新聞社

国の介護休業制度で定められている休業期間は延べ93日までですが、河北新聞社は延べ180日まで取得可能です。また、基本給の20%を特別見舞金として支給。育児に比べると介護は情報不足のため、情報提供面でのサポートを今後の課題としています。

<ポイント>

  • 介護休業期間が国の定める日数の約2倍
  • 基本給の20%を特別見舞金として支給

通算1年まで何度でも休める~Z会

元々フレックスタイム制度を採用している株式会社Z会は、柔軟な働き方を推進する取り組みをしています。フレックスタイム制度と短時間勤務制度を組み合わせて利用することが可能。介護サービスのための費用を補助してもらうこともできます。また、こちらも法定よりも長く通算1年まで何回でも分割して介護休業を取得可能です。

<ポイント>

  • フレックスタイムと時短勤務の併用<
  • 介護サービス利用のための費用補助
  • 法定よりも長く取得できる介護休業制度

企業の力が試される介護支援対策

「介護できる人が自分しかいないのに、時間がとれない」、「お金がかかるのに収入が足りない」、「情報が少なくてよくわからない」、「誰にも相談できず、孤独......」。

介護が始まってからこういった壁にぶつかる人は多いもの。従業員をしっかりとサポートできるかどうかで、企業としての力が試されているといえるのではないでしょうか。

介護から目を背ける企業は大きなリスクを背負うことになりかねません。できるだけ早く介護支援に取り組む必要があるでしょう。

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