全日本空輸株式会社(ANA)様 /
全日空システム企画株式会社(ASP)様
クエスト・ソフトウェア導入事例
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企業名:全日本空輸株式会社(ANA)様 / 全日空システム企画株式会社(ASP)様 2008年7月、「『安心』と『信頼』を基礎に」をグループ経営の基本理念に掲げる全日本空輸株式会社(ANA)では、全日空システム企画株式会社(ASP)の協力のもと、機体生産管理システム「MERS」を、SAP R/3 4.6Cから、SAPERP 6.0へバージョンアップした。 |
ユーザープロフィール

企業名:全日本空輸株式会社(ANA)様
http://www.ana.co.jp/
設立:1952年12月
所在地:東京都港区
事業内容:定期航空運送事業、不定期航空運送事業、航空機使用事業、その他付帯事業
企業名:ANAシステムズ株式会社(旧:全日空システム企画株式会社(ASP))様
http://www.anasystems.co.jp/
設立:1986年8月
所在地:東京都大田区
事業内容:ANAグループ向けを中心としたコンサルティングサービス、システムインテグレーションサービス、受託ソフトウエア開発
ANAの『安心』と『信頼』への取り組みとMERS

「MERSはANAにとって
最も大切な安心と信頼に
かかせないシステムです。」
全日空システム企画株式会社
白土 和彦氏
MERSについて教えてください。
MERS(Maintenance and Engineering Resource System)は、航空機の整備を支援するシステムです。ANAでは、「『安心』と『信頼』を基礎に」 の基本理念のもとに、航空機整備プロセスの改革を目指し、
それを実現するためにMERS を開発・導入しました。
MERSの主な機能は、
- 定期点検や不具合修正作業の計画管理
- 整備士の資格の管理
- 整備士がどの機体に対して、いつどのような作業を行ったかなどの整備データの管理
の三点で、どれも航空機の安全運航には欠かせません。
たとえば、飛行機にも自動車の車検と同様に定期点検・作業があります。ただ、飛行機の場合は、機体や対象部品で点検・作業間隔がまちまちです。毎週点検するものもあれば、10年に一回の作業というものもあり、人手でスケジュールを管理するのは煩雑で、とてもできません。
また、整備士の資格は、機体や機材ごとに異なります。たとえば、大型のボーイング747の整備ができても、小型の737の整備ができるとは限らないのです。資格は定期的に更新が必要ですが、誰がいつまでに何の資格を更新しなければならないという情報は、コンピュータがないと管理が難しいのです。
このように現代の航空機整備管理は複雑で多岐に渡ります。MERSは、ANAの最も大切にしている安心と信頼への取り組みになくてはならないシステムです。
MERSの導入時期とその経緯についてお聞かせください。
1999年から2002年にかけての整備部門の中期計画が策定されました。その目標は「お客様に満足いただける品質を競争力あるコストで提供する」ことでした。
具体的には、
- 定時出発率の向上
- 総整備費用の削減
- 間接人員のスリム化
という三つの目標と、
- 基本品質の向上
- 競争力ある生産体制の構築
- 業務プロセスの見直し
- 高いパフォーマンスを有する人材の開発
との四つの施策の実行が挙げられました。
この中期計画に基づき、2000年9月にMERSプロジェクトをスタートし、2003年6月に新システムの稼動を実現しました。
MERSの稼動により整備に関わるデータがしっかり管理できるようになり、すべての整備タスクがもれなく実施されていることを確認できるようになりました。前述した施策の実現に貢献し、目標の達成に寄与していると言えます。
当初案では整備本部からの要請には応えられなかった

「ベンダー推奨の方式
では時間がかかることが
分かり、マイグレーション
ツールの開発まで考えました。」
全日空システム企画
株式会社
長谷川 敬芳氏
今回のプロジェクトについて教えてください。
MERS導入から丸5年が経過しようとしており、新しいプラットフォームに刷新することになりました。サーバー機器を入れ替え、OSやDBMSなどの基本ソフトウエアをバージョンアップしました。同時に業務システムのベースになるSAP R/3をSAP ERP 6.0にバージョンアップしました。
課題はありましたか?
今回の移行は、業務機能を変更せずにプラットフォームだけを新しくする、いわゆるテクニカル・アップグレードだったのですが、IS-ADEC(航空・防衛産業向け業界別ソリューション)部分の、SAP標準機能自体の変更への対応が大きな課題となっていました。この課題とならび、最大の課題となっていたのが、データ移行に伴うビジネスダウンタイムをいかに短縮するかということでした。
MERSが整備の中核システムであるため、ダウンタイムに厳しい制限が課せられました。整備本部からの要請では、一回のダウンタイムは最大でも6時間ということでした。
MERSシステムを6時間以上停止すると航空機の整備・手配などが滞り、日々の運航に影響を与えてしまうからです。
そこで、まずSAP社の推奨方式を調べました。サーバーメーカーのテスト環境を使って、実機でテストを行い判明したことは、この方式では丸二日程度かかり、とても6時間のダウンタイムでは間に合わないということでした。
次に考えたのが、マイグレーションツールの開発でした。あるベンダーに開発のための調査を依頼しました。結局1カ月ぐらいして、6時間以内のダウンタイムを保証することは難しいと断られました。つまり、既存の手法では移行時間に対する要求にまったく応えられなくなってしまったわけです。
SharePlexを使用した差分移行方式を採用
それでSharePlexの検討を開始したのですか?
前述のとおり、マイグレーションツールの開発を依頼しても断られることを想定していましたので、日商エレクトロニクスにマイグレーションツールの開発以外の提案を依頼しました。
日商エレクトロニクスに提案を依頼した経緯を教えてください。
2005年からMERSに採用しているクエスト・ソフトウェア製オンライン再編成ツール「Space Manager with LiveReorg(以下LiveReorg)」を日商エレクトロニクスに導入してもらいました。
その経緯で、日商エレクトロニクスは定期的に情報提供をしてくれています。プロジェクト開始の数カ月前に、別の提案でSharePlexの紹介がありました。
ダウンタイムの短縮を検討中に、改めてSharePlexの資料を見ると、Oracleのバージョンが違っていてもレプリケーションが可能と記載がありました。
これは、大幅にダウンタイムが短縮できるのでは、と思いつき提案を依頼しました。その際に以下のような手順としたい旨も伝えました。
- 現行システムを停止して、ストレージの機能で現行データベースのレプリカを作成する。
- 現行システムを再起動して、業務を再開する(発生したデータはSharePlexが差分データとして蓄積する)。
- 新サーバーで現行データベースのレプリカを使用して新環境を構築する。
- 新環境のOracle、SAPをアップグレードし、アプリケーションを検証する。
- 現行システムを停止する。
- 蓄積された差分データを新データベースに反映する。
- 新システムで業務を開始する。
上記の方式に対し、日商エレクトロニクスからは、成功保証のためには事前検証が必要で、まずは検証テストを実施したいという回答でした。そこで、1カ月かけてクエスト・ソフトウェア社のサポートを得て検証テストを実施しました。
検証テストの結果は?
ダウンタイムは二回必要だが、どちらも6時間以内で対応できるという内容でした。
また、そのための課題も抽出してくれました。まず一つ目は、データベースのテーブル項目について調査が必要だということ、二つ目は、巨大なテーブルがあり、それがボトルネックになるので、対策を立てなければいけないということでした。
三回の移行リハーサルが正解だった

「日商エレクトロニクスを
はじめとして、どの会社も
『成功のための提案』を
してくれたのが良かった。」
全日空システム企画株式会社
長谷川 敬芳氏(左)
白土 和彦氏(右)
検証テストでの課題に対して、どんな対策を立てたのですか?
万全を期すために、システム移行のリハーサルを三回予定し、SharePlexによる差分移行もこのリハーサルに組み込みました。日商エレクトロニクスは、深夜にも関わらずログの解析や問題点の抽出など全面的に協力してくれました。
リハーサルを重ねるたびに、データの精度が高まっていき、本番ではデータのエラーがほとんどありませんでした。テストフェーズでのアプリケーション移行チームの作業量が多くなり、スケジュールはタイトとなりましたが、移行品質を高めるという意味でリハーサルを三回実施したのは正解でした。
三回のリハーサル結果から、例の巨大なテーブルについては、再編成が必要だということがあらためて分かりました。そこで、不測の事態に備えて確保しておいた一週間を使い、関係各社に協力してもらって、再編成を実施することにしました。
再編成のためだけにすべての業務を停止することはできないので、オンラインでの再編成をしなければなりませんでした。
そのために(オンライン再編成ツールである)LiveReorgのバージョンアップと追加のディスクが必要になりました。
急きょ、他システムで未使用となったディスク装置を借りてMERS用にセットアップしてもらいました。
再編成は無事に終わったのですか?
はい。
途中で夜間の重要なバッチ処理も停止する必要があることがわかりましたが、待機していた日商エレクトロニクスのシステムエンジニアに状況を整理してもらいました。その後、三連休中にもかかわらずANAのプロジェクトオーナーおよびユーザー部門のIT窓口の責任者に了解を得て無事に作業を終了しました。
本番の移行作業は期待どおりの結果でしたか?
本番の移行作業は2008年7月25日(金)の未明に始まり7月28日(月)の早朝に終了しました。この間、業務のダウンタイムは作業開始直後に2時間16分と終了直前の3時間32分でした。一回あたり6時間以内という制限時間はもちろんのこと、合計でも6時間以内に収まりました。結果的にANAの要求を充分満足するものとなり、移行作業全体としても大成功でした。
SAPのマイグレーションを6時間の停止で実現したことは国内で最短の実績であるとともに、SharePlexによる差分移行は世界的に見ても、画期的な手法であったと思っています。
日商エレクトロニクスへの今後の期待
日商エレクトロニクスへの今後の期待をお願いします。
今回のMERSのマイグレーションにおいては、SharePlexの存在なくして、成功はなかったと思います。事前の日商エレクトロニクスからの情報提供がなければ、SharePlexの存在自体を知らないままだったでしょう。
他社にはない提案や情報提供、さらにユーザー環境を熟知した上でコンサルティングをしてくれることが、日商エレクトロニクスのよさだと思います。今後もこのような情報提供を継続してくれることを期待します。

写真左から
全日空システム企画株式会社
貨物・整備システム部第三チームエキスパート 長谷川 敬芳氏
同チームリーダー 白土 和彦氏
日商エレクトロニクス株式会社 エンタープライズ事業本部
テクノロジーソリューション統括部 プロダクトマネージャー 吉山 利朗
*取材日 2008年11月
*記載の担当部署は、取材時の組織名です。