2021/12/13

AWSは市場の物差し、新CEOが語る3つのクラウドトレンド

コロナ禍におけるイベント開催の制約をのりこえ、2年ぶりにAWS re:Inventが米国ラスベガスに帰ってきました。初のオンライン、オフライン同時開催によるハイブリッドで行われた「AWS re:Invent2021」では何が語られたのか。2021年はAWSリリース15周年、re:Invent開催10周年をむかえ、何より注目は新CEOアダム・セリプスキーの初登壇ではないでしょうか。ナスダック、United Airlines、Dishや3M等、様々な業界の先駆者とのパートナーシップを発表しながら注目の新機能を複数発表しています。同氏のキーノートセッションから2021年のAWS re:Inventを振り返るとともに、そのトレンドを考察したいと思います。

こんな人にオススメ!

■CXO(CEO,CTO,CIO)
■情報システム部門役職者
■クラウド戦略担当者

1.エッジクラウドがより本格化

エッジクラウドという言葉は数年前から度々キーワードとして登場していましたが、2021年から2022年にかけて本格化していく兆しを見せています。
2019年にリリースされたAWS Outpostsの発表以来、ユーザ環境に近いオンプレミスへAWS環境をセットアップすることで、高速、低遅延のAWS活用が進んでいますが、今回は、エッジの代表格であるローカル5G、IoTに焦点があたった3つの注目新機能発表がありました。

AWS Private 5G

AWS Private 5Gは、SIMカードから物理的なPrivate 5G(ローカル5G)を構成するハードウェアまですべてAWSが用意することで、ユーザはスピーディかつ容易にPrivate 5G環境を構築できるサービスです。
通信事業者が提供する5Gサービスを製造現場や病院等、特定エリアで利用するにはやはり時間とコストが膨大になります。
データをAWSに送信し、分析等行うことでAWSとPrivate 5G(ローカル5G)による相乗効果を狙います。

AWS IoT TwinMaker

AWS IoT TwinMakerは、いわゆるデジタルツインを実現します。
製造業における商品開発や設備を仮想的に再現することでデータ検証や分析を行い、AWSが提供するIoT SiteWiseやKinesis Streams、S3等と組み合わせることで開発速度の向上や改善に役立てます。

AWS IoT FreetWise

Volkswagen、ToyotaやHonda等、Connected Carの開発が進みますが、自動車に接続される複数のセンサーデータやテレメトリーデータを簡単に収集、取得できるようにするサービスです。
Connected Car開発に関与する製造、自動車業界においては今後必要不可欠なサービスです。

汎用的なサービスというより、業界特化型サービスを強固にしていくことで既存顧客の囲いこみを行い、他クラウドとの差別化を行う印象を受けました。

2.データ利活用時のガバナンスがより重要に

先ほど述べたエッジクラウド然り、すべてのサービスにおいて肝となるのはデータです。
ただし、データは収集し保管すればよいということではもちろんありません。
DX成功企業の殆どがデータ利活用を行っているように、データは活用してはじめて価値が生まれます。

新CEOであるアダムはデータジャーニーという言葉を使い、データベース、データレイク、データ分析、機械学習という一連の流れを意識することが必要であり、その場面場面で適材適所のAWSサービスを活用することが成功の秘訣だと述べています。

中でもおさえておきたいのがデータガバナンスです。すべてのプロセスに影響し、企業のコンプライアンスやリスク対策には欠かせません。
そこで今回新たにGAになったのが、Row and Cell level Security for Lake formationです。
データフィルタというルールによって、行およびセルレベルのセキュリティを備えたきめ細かいアクセス制御を実現します。
部門や部署が違えばアクセスするデータも異なりますし、そのセキュリティレベルも違います。
アクセス元のペルソナに応じたアクセス制御を簡単かつ柔軟に行うことにより、データ利活用時代のリスク回避を行うわけです。

今後クラウド活用は間違いなく増え、クラウド上に格納するデータも膨大になっていきます。
企業の競争力を高めるためにクラウドを有効活用しながら、社会的立場を安全かつ継続的に維持していくためには必要不可欠な要素です。

3.ユーザ共創によるサービス開発が活発に

新CEOアダムのセッションで発表された新機能のうち、最も興味深かったのはGoldman Sachsと共同で開発された「Goldman Sachs Financial Cloud for Data」です。
これまでユーザ向けにAWS独自、もしくはテクノロジーベンダーとともに開発してきた新機能が中心であった中、このサービスはそのユーザと共創しつくりあげた新機能だったためです。これまでのAWSの歩みにおいて非常にユニークなコラボレーションだったのではないでしょうか。

Amazon Data ExchangeとAmazon Finspaceを活用し、Goldman Sachsが何十年もかけてつくりあげてきたデータを金融向けサービスとして提供することで、ユーザはGoldman Sachsが活用するデータと同じデータにアクセスできます。
これにより、クラウド上で専門的な金融データを検出、整理、分析する方法を容易に獲得でき、ユーザとなる金融機関は投資判断等を迅速に行えるようになるわけです。

DXにおいて企業間共創は非常に重要です。
異なる業界のサービスやデータを組み合わせることで時に新たなビジネスモデルをうみ、画期的な価値を生み出します。
クラウドのトップを走るAWSのこの動きは、業界のDXに影響をあたえ、今後トレンドになっていく可能性を感じます。

まとめ

今後もAWS採用は活発に進むが、よりその採用ハードルをさげる工夫も必要

本記事に興味を持って頂ける皆さまは少なからずAWSを活用、もしくはAWSを今後採用しようとされている方もいらっしゃるかと思います。

「AWS re:Invent2021」において、新CEOであるアダムのキーノートからもAWSの勢いを感じました。
これまで先駆者として業界をリードしてきたように、引き続きAWSはクラウド業界の先駆者として活躍していくでしょう。
AWSは市場の物差しです。AWSの新機能やサービス、トレンドをおさえておけばユーザが今どのステージにいるかということが分かります。
そして、AWSは毎年のように新機能、新サービスを数多くリリースし、さらに企業としての競争力を高め強大になっていくことでしょう。
ただし、そのスピードにユーザはついていけるのでしょうか。答えはノーです。

AWSの採用ハードルをさげていく工夫も必要です。
我々はクラウド採用過程の中でもクラウドネットワークの観点でAWSの採用ハードルを下げる手段をご提供します。より簡単にAWSを利用できる環境つくりをサポートするということです。
もちろん我々自身はAWSではないので、AzureやGCPに対しても同様です。